供与型金属−金属間結合を有する錯体の合成と発光挙動


1 供与型結合とは?

 供与型金属−金属結合は、一方の金属イオンが他方の金属イオンに配位するという新しいタイプの金属−金属間結合として注目されている。
 平面四配位構造を持つPt(II)錯体には、配位平面から垂直方向に電子の詰まったdz2軌道が存在する。この孤立電子対の2電子供与によりPt→M結合が形成される。

Pt(II)錯体のdz^2軌道の形とエネルギー準位
図1.1 Pt(II)錯体のdz2軌道の形とエネルギー準位
 供与型Pt→M結合はPtのdz2軌道とアクセプターMの空のσ軌道とが相互作用することにより安定化し、供与型結合が形成される。
 強い配位子場によってPtのdz2軌道のエネルギーが上昇し、軌道同士のエネルギーが近くなれば相互作用が大きくなり、より強い結合の形成が期待できる。
 当研究室では配位子場を強くするために炭素配位を有するPt(II)錯体を用いている。
配位子場強度と相互作用の大きさの関係
図1.2 配位子場強度と相互作用の大きさの関係

2 これまでの報告例

バタフライ型 Pt-Ag 2:2錯体 Pt-Ag 1次元鎖錯体
図2.1 バタフライ型 Pt-Ag 2:2錯体
Pt-Rh2 2:1錯体
図2.3 Pt-Rh2 2:1錯体

図2.2 Pt-Ag 1次元鎖錯体

Pt-Cd 1:1錯体 Pt-Cd 4核錯体
図2.4 Pt-Cd 1:1錯体 図2.5 Pt-Cd 4核錯体

3 錯体の発光性

 いくつかのPt(II)錯体は3重項からのりん光発光を示すことが知られている。供与型Pt-M結合を作ることにより発光挙動がどのように変化するかに興味が持たれる。
 Pt-Cd 4核錯体の溶液を空気中で測定したところ、原料のPt錯体(右図黒線)に比べピークが長波長シフトし、強度が増大している。
Pt-Cd錯体の発光強度
図3.1 Pt-Cd錯体の発光強度


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